久万高原ラリー

開催日時:4月26日(金)〜28日(日)
開催場所:愛媛県久万高原町
スペシャルステージ本数:8本
スペシャルステージ総距離:105.10km
ラリー総距離:300.91km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ウエット/ドライ
ポイント係数:1.2

2024年シーズン全日本ラリー選手権第3戦「久万高原ラリー」が、4月26日(金)~28日(日)にかけて、愛媛県上浮穴郡久万高原町を拠点に開催された。JN-1クラスは、トヨタGRヤリス・ラリー2をドライブする勝田範彦/木村裕介が優勝。2位にはトヨタGRヤリス・ラリー2の田口勝彦/北川紗衣、3位にはシュコダ・ファビア・ラリー2 Evoの福永修/齊田美早子が入っている。

全日本ラリー選手権は第2戦唐津から2週間という短いインターバルを経て、第3戦久万高原を迎えた。サービスパークは例年どおり「ハイランドパークみかわ」に置かれ、2日間で8SS(SS総距離105.10㎞)を走行する。今回、尾根づたいを走行する「大川嶺」が、2019年以来5年ぶりに復活。このステージは最大標高1500mを走行するため、エンジンパワーの低下や、下り区間でのブレーキの酷使など、マシンに大きな負荷がかかることが特徴となる。一方、標高700〜800m付近の深い森を走行する「大谷」は滑りやすい路面が多く、時にはリタイア車が続出する難ステージとしておなじみだ。また山間部は天候の変化も激しく、タイヤ選択が分かれることも少なくない一戦だ。

トップカテゴリーのJN-1クラスは、前戦に続き手術を終えて療養期間にあるヘイキ・コバライネンが欠場。今回もラリーチーム・アイセロのトヨタGRヤリス・ラリー2は、田口勝彦がステアリングを握る。開幕戦三河湾からJN-2クラスに導入された「MORIZO Challenge Cup」には、第2戦唐津に続き8名がエントリーを果たした。

レグ1

ラリー初日は「大谷(12.22km)」と「大川嶺(13.93km)」の2SSを午前と午後でリピートする4SS、52.30km。最終日は、この2本をリバースで走行するという、シンプルなアイテナリーが採用された。ラリー初日の天候は、事前の予報では晴れとなっていたが朝から雨。ステージでも降ったり止んだりを繰り返しており、コンディションはウエットとなった上、山頂では深い霧が立ち込めている。

ラリーは、久しぶりに久万高原町役場でセレモニアルスタートが行われたが、開幕戦三河湾でリタイアした柳澤宏至/竹下紀子(トヨタGRヤリス)は、セレモニアルスタート直後にエンジントラブルによりレグ離脱。車両をサービスに戻し、修復に取りかかっている。オープニングのSS1、前戦唐津のウイナーの新井大輝/松尾俊亮(シュコダ・ファビアR5)が予想外のトラブルに見舞われた。スタート直前に、彼のファビアR5にクラッチトラブルが発生。SS1を発進したものの、スタートから約1km地点でマシンを止め、2週間後に控える次戦丹後に備えてこの時点でリタイアを決めている。続くSS2では、スタートから約4km地点で奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス・ラリー2)が苔に乗ってコースオフ。早くも優勝候補の一角を担う2台が姿を消してしまった。

ウエットコンディションとなった午前中のセクション、SS1とSS2で連続ベストタイムを刻んだのは勝田。この2本のステージだけで、2番手の新井敏弘/井上草汰(スバルWRX S4)に48.6秒、3番手の田口に52.2秒、福永に58.4秒もの大差をつけて見せた。

ハイランドパークみかわでの中間サービスを挟んだ、午後のセクション。雨は小康状態となり、路面の一部が渇きつつある。しかし、霧は午前以上に深く立ち込める難しいコンディションのなか、SS3は首位の勝田が福永に11.9秒差をつける3連続ベスト。続くSS4でも勝田が田口に15.0秒差をつけ、終わってみれば、この日行われたすべてのSSで一番時計をマークし、2番手以下に1分20秒以上のアドバンテージを得て初日を終えた。

新井敏弘が乾きつつある路面で思うようにペースが上がらない一方で、SS4でセカンドベストを記録した田口が2番手に浮上。ただ、その4.5秒後方には3番手の福永がピタリと付け、福永から5.4秒差の4番手は新井敏弘。2番手田口から4番手の新井敏弘までは、10秒差以内にひしめいており、まだまだ分からない状況だ。

「今日は、いいフィーリングで走ることができました。特にタイヤがすごく良かったですね。ただ、新井大輝選手と奴田原選手がリタイアしてしまったので、スピード的に速かったのかは分かりません。明日、奴田原選手が再出走した段階でどうなるかですね。それでも丹後に向けてできることをしっかりしたいです」と、勝田は1日を振り返った。

首位勝田から大きく引き離されたものの、2番手につける田口は「久万高原は嫌いじゃないタイプのラリーなので、それなりに走れましたね。路面に関しては、尾根を走るSS4は乾きつつありましたが、SS3は1回目よりも滑る感じがありました。明日もこのままのペースをキープしながら、ポジションを守りたいです」と、笑顔で語っている。

JN-2クラスは、MORIZO Challenge Cup(MCC)に参戦する大竹直生/草加浩平(トヨタGRヤリス)がSS1でベストタイムをマークしてトップに立つ。午前中のセクションを終えて、2番手の山田啓介/藤井俊樹(MCC:トヨタGRヤリス)に17.6秒、SS2でベストを獲った三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI)に18.9秒差をつけてラリーをリードした。天候が回復しつつあった午後のセクション、SS3でトップの大竹が側溝にはまってタイムロス。さらにこのSSでは4番手につけていたKANTA/保井隆宏(MCC:トヨタGRヤリス)も、スタートから8km地点でアウト側の壁に激突しクラッシュ、クルーに大きな怪我はなかったものの、ここでリタイアとなった。なおこのSS3では、KANTAの車両がコースを塞ぐかたちとなったため、以降にスタートした車両にはノーショナルタイムが与えられている。

これで、SS3では自身のタイムがトップとなった三枝が、山田に7.2秒差をつけて首位に浮上。三枝はSS4でも連続ベストをマークし、山田との差を51.4秒差に広げて初日を終えた。クラス3番手には小泉敏志/村山朋香(トヨタGRヤリス)、4番手には泉陽介/石田一輝(三菱ランサーエボリューションⅩ)がつけている。

前戦唐津で待望の全日本初勝利を手にした三枝は、初日首位に「無事に帰ってこられたからこそ、初日をいい順位で終えられました。特にSS3は頑張って攻めたので、見合ったタイムが出せましたね。木がないところは乾いていましたが、それ以外はウエットでした。おそらく晴れるであろう明日のタイヤ選択が悩みどころです」と、笑顔で振り返った。一方、2番手ながらもMCCでは首位に立った山田は「自分としても不甲斐ない走りだったことで、タイム差がかなりついてしまいました。それでも、コンディションがかなり危なかったですし、結果サバイバル戦になっているので、生き残れたという意味では、経験が活きたとも考えています」と、悔しさをのぞかせた。

トヨタGR86/スバルBRZによって争われるJN-3クラスは、地元愛媛県出身の山口清司/丸山晃助(トヨタGR86)がSS1でトップに立つと、ウエットコンディションで安定したペースを披露。SS4でも2度目のベストをマークし、初日を首位で折り返した。序盤2番手を走行していた長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86)はSS4で霧を警戒してペースダウンし、2.4秒差ながらも曽根崇仁/竹原静香(トヨタGR86)が2番手に浮上。優勝候補の山本悠太/立久井和子(トヨタGR86)は、SS1で左フロントタイヤをパンクし、首位争いから大きく遅れた4番手に沈んでいる。

久々にクラストップに立った山口は「クルマが乗りやすく、いいペースで走れました。SS4は霧がすごかったのですが、クラス全体が軒並み伸び悩んでいたので、その中でトップを獲れました。明日はドライを予想していますが、コースがどれくらい乾くかですね」と、慎重にコメント。34.4秒差の2番手につけた曽根は「SS1は、前半で探りすぎましたね。ちょっと僕の悪い癖が出ました。最後のSS4は霧が1本目よりも濃くて、かなり怖かったです(笑)。明日が勝負だと思っているので、SS1でロスした分を挽回したいです」と、最終日に逆転を狙う。

スズキ・スイフトスポーツによって争われるJN-4クラス。SS1は、開幕から2連勝中の高橋悟志/箕作裕子(スズキ・スイフトスポーツ)がベストタイムを出したが、開幕戦三河湾でギャップでエンジン下部を打ちリタイアに終わった昨シーズンの王者内藤学武/大高徹也(スズキ・スイフトスポーツ)が、SS2とSS4を一番時計で並べてトップに立った。高橋は13.2秒差の2番手。両者は総合でも9番手、10番手に入る激しい戦いを展開している。また、3番手にも優勝候補の一角、西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)が20.8秒差で追っている。

開幕戦のリタイアを払拭するように、ウエットとなった初日でスピードを見せた内藤は「トップで終えられて良かったです。ちょっとは差を作ることがきましたね。ただ、これで気を抜くと逆転されてしまうので、気を引き締めて走ります。明日は天候がどうなるか分からないので、ウエットを想定しつつ、明日の朝に仕様を決めます」とコメント。3連勝を狙った高橋は「今日は内藤選手が速かったですね。タイムを獲り返そうと思っていたSS3がノーショナルタイムになってしまったのが痛かったです」と、内藤のスピードに驚きを隠さない。

JN-5クラスは、開幕戦のウイナーで昨年王者の松倉拓郎がスキップし、大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)と河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ)による一騎討ちの展開となった。SS1を大倉が獲ると、SS2で河本が獲り返して逆転。しかし、大倉も1.3秒差でピタリと後を追う。ノーショナルタイムとなったSS3を挟み濃霧となったSS4では、大倉が河本を33.9秒差も突き放す圧倒的なベストを叩き出し、再逆転。この日は、大倉が河本に32.6秒差をつけて、初日をトップで終えた。56.0秒差の3番手に小川 剛/山本祐也(トヨタ・ヤリス)、その4.3秒後方には平川真子/美野友紀(トヨタ・ヤリス)が4番手で続く。

この日最後のステージで一気にひっくり返した大倉は「SS4は何が起こってもおかしくないコンディションでした。安全性を考えると、スタートするのも疑問です。河本選手に大差をつけられたので、良かったんですけどね。こんな怖い思いはしたくないです」とコメント。順調にリードしながら、最後に逆転された河本は「SS4は僕がとにかくすごく遅かっただけです。原因は分からないです。霧が原因なのか、それにしても……(遅かった)ですね」と、肩を落とした。

JN-6クラスは、シーズン2連勝中のチャンピオン、天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、ノーショナルタイムとなったSS3以外の全SSでベストタイムをマークし、またも首位を独走。22.0秒差の2番手に清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)、3番手にはマシンをホンダCR-Zに戻した中西昌人/山村浩三が続いている。

高低差のあるステージにおいて、ハイブリッドパワートレインの試行錯誤を続ける天野は「後半のセクションは色々と試したんですが、逆にタイムを落としてしまいました。ハイブリッドは、今回のような悪条件では厳しいです。クラス首位ですが、満足のいく走りではありません」と、初日を振り返った。ウエットを含めた難しいコンディションに顔をしかめた清水は「天野選手を意識するよりも、今日は自分との戦いでした。昔はこういったラリーでも有視界で走っていたんだから、ペースノートがあるぶん安全に走れますが、霧は何も見えなくて怖いです」と、コメントしている。

レグ2

ラリー2日目は、前日の逆走となる「大川嶺リバース(13.73km)」、「大谷リバース(12.67km)」の2ステージを午前と午後でリピートする4SS、52.80km。ラリースタート直後にレグリタイアした柳澤宏至/竹下紀子(トヨタGRヤリス)、SS2においてアクシデントによりレグ離脱した奴田原文雄/東駿吾(トヨタGRヤリス・ラリー2)は、それぞれマシンを修復し、無事にリスタートした。

前日から一転、快晴となったラリー最終日。路面は乾きつつあるものの、木々の下などにウエットが残っている難しいコンディションとなった。2番手以下に1分20秒以上のアドバンテージを手にした首位の勝田範彦/木村裕介(トヨタGRヤリス・ラリー2)は、滑りやすい路面を警戒してペースをコントロールする。

オープニングのSS5は、2番手の田口勝彦/北川紗衣が、トヨタGRヤリス・ラリー2で初のベストタイムを獲得。田口にとっては、全日本ラリー選手権での初ステージウインとなった。3番手の福永修/齊田美早子(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)は20.4秒差のSS3番手タイムと出遅れ、前日4.5秒だった差は24.9秒にまで拡大した。また、このステージでは、鎌田卓麻/松本優一(スバルWRX STI)が戦列を去ることに。初日の最終サービスでギヤボックスとリヤデフを交換し6番手からの浮上を狙ったが、コースオフの影響により、その後走行を続けるもののパワーステアリングにトラブルが発生、リタイアを余儀なくされている。

SS6は、勝田が新井敏弘/井上草汰(スバルWRX S4)に20.7秒差をつける圧倒的なベストタイム。2番手の田口との差を1分36秒6差に拡大して、午前中のセクションを終えた。勝田から2分以上離されているものの、3番手福永と総合4番手新井敏弘の差はわずか1.3秒。最終セクションも25km以上の距離が残されており、こちらは順位が入れ替わる可能性が十分にある。

サービスを挟んだ午後のセクション、勝田はSS7とSS8を連続ベストタイムでまとめ、開幕戦三河湾に続くシーズン2勝目を獲得。1分57秒7差の総合2位に田口が入り、GRヤリス・ラリー2で自身初となる全日本ラリー選手権での表彰台を手にした。

福永と新井敏弘による僅差の3番手争いは、わずか0.6秒差で凌ぎ切った福永が3位表彰台を獲得。ナローなセクションで福永に一歩及ばなかった新井は、悔しい4位。以下、4分20秒5差の5位に眞貝知志/安藤裕一(トヨタGRヤリスDAT)、6分12秒8差の6位に石黒一暢/穴井謙志郎(トヨタGRヤリス)が入っている。

シーズン2勝目を挙げてポイントリーダーの座をしっかり確保した勝田は「難しいコンディションのラリーだったので、無事にトップで走り切れて本当にホッとしています。次戦まであまり期間がありませんが、今回とてもいいフィーリングで走れたので、このセットアップで丹後にも挑みたいと思います」と、喜びを語った。一方、「自分は代役」と語りながらもしっかりと結果を残した田口は「今日は予定どおり淡々と走って、2位を獲得できました。昨日の段階で得意な箇所が分かったので、それ以外のセクションはしっかり抑えて走りました。大人の走りができましたね(笑)」と、笑顔で振り返った。

JN-2クラスは、三枝聖弥/船木一祥(スバルWRX STI)が首位を快走。オープニングのSS5は小泉敏志/村山朋香(トヨタGRヤリス)が初のベストタイムをマークし、山田啓介/藤井俊樹(MCC:トヨタGRヤリス)をかわして2番手にポジションを上げた。初日だけで50秒以上のアドバンテージを得ていた首位の三枝は、SS6とSS8でもベストを刻み、2位の小泉に1分18秒9の大差をつけてシーズン2勝目を獲得。MORIZO Challenge Cupでの順位を重視した山田は、今後に向けて様々なことを試しながらペースをコントロール。最終SSで2番手タイムをマークした泉陽介/石田一輝(三菱ランサーエボリューションⅩ)が、山田をかわし3位表彰台を手にしている。

初優勝から2連勝を飾った三枝は「唐津と同じように最後はドキドキしながら、とりあえずコース内にいようと心がけました。抑え過ぎるのではなく、タイムを気にしながら走りました。1回勝っただけでは、まぐれだと言われてしまうので、2勝目ができて本当に良かったです。ただ、シリーズチャンピオン決めるまで、油断しないように頑張りたいです」と、コメント。自己ベストを更新する2位表彰台の小泉は「全日本では初めて2位に入れました。午後のループは足まわりをドライ寄りにして、『乾いてくれ』と祈りながら走りました(笑)。最初のループよりもコンディション良く、いい走りができましたね。ウエットとなった1日目で遅かったことが、今後の課題です」と、喜びを語っている。

JN-3クラスは、2番手からスタートした曽根崇仁/竹原静香(トヨタGR86)が、乾きつつある路面となったSS5、SS6で連続ベストをマーク。首位の山口清司/丸山晃助(トヨタGR86)との差をスタート時の34.4秒から、14.1秒にまで縮めてみせる。すると午後のループでは、山口がフレッシュタイヤを投入し、SS7で曽根を突き放すベストタイムをマークし、その差を21.9秒差に戻した。山口は最終SSでもその差を守り切り、2019年の久万高原以来となる、トップフィニッシュを果たした。最終のSS8では、クラス3番手につけていた長﨑雅志/大矢啓太(トヨタGR86)が圧巻のベストタイムを叩き出して曽根に迫るが、わずか0.1秒届かず。曽根が2位で逃げ切り、長﨑は3位に留まった。

5年ぶりに全日本勝利を持ち帰った山口は「一番思い出のあるラリーなので、本当に嬉しいです。最初のループのコンディションが難しくて、だいぶ詰められてしまったので、午後は新品のドライタイヤに変えて、いいタイムが出せました」と、喜びを語った。優勝を目指しながらも、最後は長﨑に迫られてしまった曽根は「最後に長﨑選手に10秒まくられて、コンマ1秒差はしびれました(笑)。まさか負けないだろうと思っていたのですが、本当に危なかったです」と、安堵の表情を見せている。一方、0.1秒届かなかった長﨑は「本当にあと一歩でしたね。最後頑張ったんですが、午前中のシートのボルトが外れるトラブルが、後に響いてしまった感じです」と、悔しさをのぞかせた。

JN-4クラスは、初日トップの内藤学武/大高徹也(スズキ・スイフトスポーツ)が、ウエットとドライが混在する難しいコンディションとなった最終日もSS5からSS7まで3連続ベスト。最終SSは西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)にベストを奪われたものの、それまでのマージンを活かし、高橋悟志/箕作裕子(スズキ・スイフトスポーツ)に18.8秒差をつけて、総合でも8位に食い込む速さを見せてシーズン初勝利を飾った。高橋も総合9位と、JN-4クラスがハイレベルの戦いを見せた。3位の西川も10.1秒差で続いた。

全ステージ制覇は叶わなかったものの、待望の勝利を持ち帰った内藤は「最後のSSは、タイヤがかなり厳しかったです。それまでのマージンでギリギリなんとか帰ってこられました。やっとチャンピオンとして勝てました。これで気が楽になったので、チャレンジャーとして丹後に挑みます」と、安堵の表情。最終ステージこそ内藤を上まわったものの、ここで連勝が止まった高橋は「本当に悔しいです。今回、流れは悪くなかったんですが、タイヤの使い方やセッティングなどツメが甘かったです」と、悔しさを露わにした。

JN-5クラスは、初日首位の大倉聡/豊田耕司(トヨタGRヤリスRS)が、オープニングのSS5でベストタイム。しかし、1.6秒差の2番手タイムで続いたは河本拓哉/有川大輔(マツダ・デミオ)は、続くSS6で大倉に20秒以上の大差をつける一番時計を叩き出し、その差を一気に10.6秒にまで縮めてみせた。サービスを挟んだ午後のセクション、SS7は大倉がSS5に続きベストタイムで、その差を13.1秒に広げる。河本は、最終のSS8でベストを獲り返すが5.7秒届かず、大倉が今シーズン初勝利を獲得した。3番手を走行していた小川 剛/山本祐也(トヨタ・ヤリス)がSS6で側溝にはまってリタイアしたことで、初日の5番手から順位を上げた嶋村徳之/佐々木裕一が、自身初の全日本表彰台となる3位に入った。

逃げ切った大倉は「全開で走ったんですが、最後も7秒くらい負けていましたね。今年はここまで苦しんでいますが、クルマも良くなりそうですし、ダンロップが素晴らしいタイヤを用意してくれて勝つことができました。チーム一丸の勝利で、本当に嬉しいです」と、笑顔で喜びを語った。2位に終わった河本は「一歩届かず、残念です。かなり迫ったんですけど、5.7秒足りませんでした。最終日に速く走ることができましたが、ちょっと攻め過ぎたので、無理をしないでも速く走れるようにしたいです」と、反省点を口にした。

JN-6クラスは、天野智之/井上裕紀子(トヨタ・アクア)が、体調不良を抱えながらも、全てのステージを制して開幕3連勝。2位の清水和夫/山本磨美(トヨタ・ヤリス)、3位は中西昌人/山村浩三(ホンダCR-Z)が入り、初日のオーダーでラリーを終えた。

今回も完全勝利でクラスをリードする天野だが、「とりあえずは勝てて良かったですし、体調も最後までもって良かったです。ハイブリッドは3kmくらいの上りセクションであればなんとかなるのですが、5kmを超えてしまうとキツイですね」と、課題を指摘する。天野との差は広がったものの清水は「今回もまた2位ですが、得るものが多かったです。雨や霧の中を走ったことで、路面やタイヤに関して色々と経験を積むことができました。全体的にはちょっとずつ差が縮まっている実感はありますが、路面、走り方、ペースノート、やることが多いです」と、成果を語った。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 勝田 範彦/木村 裕介 GR YARIS Rally2 1:25:28.0
2 JN1-2 ⽥⼝ 勝彦/北川 紗⾐ AICELLO速⼼DLヤリスRally2 1:27:25.7
3 JN1-3 福永 修/齊田 美早子 OSAMU焼肉ふじ☆CTE555ファビア 1:28:06.8
7 JN2-1 三枝 聖弥/船木 一祥 名古屋スバル ラック DL WRX 1:32:10.4
8 JN4-1 内藤 学武/⼤⾼ 徹也 YHアーリット スイフト 1:33:08.5
12 JN3-1 ⼭⼝ 清司/丸⼭ 晃助 エナペタルADVAN久與GR86 1:34:03.3
17 JN5-1 ⼤倉 聡/豊⽥ 耕司 AISIN GR Yaris CVT 1:36:10.4
30 JN6-1 天野 智之/井上 裕紀子 TRT・DLアクアGR SPORT 1:41:54.9

注)クラス区分については全日本ラリー選手権の基礎知識をご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

イベントフォト

JN-1クラス優勝 勝田 範彦/木村 裕介

JN-2クラス優勝 三枝 聖弥/船木 一祥

JN-3クラス優勝 山口 清司/丸⼭ 晃助

JN-4クラス優勝 内藤 学武/大高 徹也

JN-5クラス優勝 大倉 聡/豊田 耕司

JN-6クラス優勝 天野 智之/井上 裕紀子